蔡明亮の映画が一年のうちに3本も観られるなんてすごいことです。おそろしいことです。
今回の舞台は監督の故郷であるマレーシア。
無一文なのに路上で怪し気な賭けに巻き込まれたシャオカンは、男達に袋だたきにあって道路に行き倒れる。それを助けた労働者の青年ラワンは、自分の部屋に連れて行って懸命にシャオカンの看病をする。
近くの小さな中華料理屋で働くシャンチーは、女主人の寝たきりの息子(李康生2役)を看病している。
黙々と彼の歯を磨き、頭を洗ってやるシャンチーは、疲れて店の2階の狭い部屋で眠ります。
不器用な手つきで、ビニール袋に入ったジュースを氷嚢がわりにシャオカンの頭に何とか乗せてやろうとするラワン。
どこから来たのかも分からず死にそうになり、元気になってもどこにも行くあてもなく町を彷徨っているシャオカン。
蔡明亮の映画の人物たちは、相変わらず寡黙で孤独。シャオカンとシャンチーは全然、ひと言もしゃべらない。愛なんか語らずにいきなり動作と行為だけがある。そこにはスクリーン越しにも強く感じられる感情があるだけです。
そして人との関わりを避けているように見えながら、実はずっと愛を求め続けています。
だってこの映画の英語タイトルは「I don't want to sleep alone」。
わたしにはシャオカンの世話をするラワンとシャンチーが、どうにも表裏一体というかダブって見えてしょうがなかったです。そして2人のシャオカンはきっと同じ人物なのでしょう。
だからあの優しく穏やかなラストシーンに結びつくんだろうなぁと思いました。
廃墟に出来た池のような巨大な水たまりが黒い眼というのはなんとなく感じられるけれど、何度も出てくるあの重そうで汚そうなマットレスの意味はさすがに解説を読むまでは分からなかったなぁ。
東南アジアを旅したことがある人は感じられると思うけど、あの狭苦しい汚い路地にある小さな建物。小さくて虫がたくさん出てきそうなお世辞にも清潔といえない部屋。虫と言えば巨大な蛾!水が流しっぱなしのトイレに風呂場。屋台の食堂のほこりっぽそうなテーブルや食器。めちゃくちゃリアルでした。
ああ、あの途中で流れる「アイヤー」っていうインド映画の主題歌が頭から離れません…。